2014年3月23日日曜日

キャンプでの火の点け方

【火を点ける方法】
古典的な着火方法として、ゆみぎり式、きりもみ式、まいぎり式などがあります。枯れ葉や木の枝などの乾燥した火口(燃えやすい材料)があれば、これらの方法で着火できますが、大人でも30分くらいかかります。かなり大変です。

「サバイバルナイフ+乾燥した竹」があれば、もう少し簡単に着火できます。2017年12月29日放送の無人島0円生活(テレビ朝日)で友寄氏(ナスD)が実践しています。5分で点火しています(すごい!)。
1.竹を20cmくらいに切り、半分に割る。
2.片方の竹の表面を削って火口を作る。
3.竹の中心に切り込みを入れ、火口を切り込みの下に置く。
4.切り込みの上で竹同士を擦り合わせ、熱くなった粉が火口に落ちるようにする。

「マッチやライター」があると更に簡単に着火できます。炭や薪と一緒にBBQでよく使われます。強風の日は着火剤があると便利です。ただ、着火剤から大きな薪や炭に直接火を移そうとしても、熱を伝えるのに時間がかかり、その間に着火剤が燃え尽きてしまうことがあります。薪や炭の間に紙や小枝を入れると、より熱を伝えやすいです。火は、少しずつ大きくしていくので「育てる」という表現が使われます。
1.炭や薪を10個ほど固めて置く。空気が通る隙間ができるように。
2.紙などの火口に点火し、炭の間に入れる。紙は食用油などに浸すとより良い。
3.仰ぐか息を吹いて炭に火を点ける。BBQは、10分ほどしてから炭を広げる。

他にも「ルーペやメガネ、氷、水を入れた透明のビニール袋、空き缶の底」があれば、太陽光を集束させて火を点けることができます(設計集熱計算)。「電池やレモン+ガムの包み紙」でもジュール熱で火を点けることができます(熱量計算)。文明の利器ですね。これらの技術や知識は災害時にも役立ちます。


【火打石を使って薪に火を点ける】
火打石でも点火することができます。火打石は、石英などからなる発火石(フリント)を、鋼などの金属に打ち付けて火花を散らすことで点火させる道具です。今回、市販品のファイヤースターターで試してみました。

1.[火口を準備] 枯れ葉や紙の上で削ったMgの粉をのせる
2.[火花を出す] Mg粉の上で、発火石(黒い部分)を金属(刃)で強く打つ
3.[点火する] 火花がMg粉にあたれば火が着き、紙が燃えだす

原理としては、鋼を削る際に発火石が摩擦熱を発生させ、削られた熱い鉄片が空気中で酸素と反応し、その酸化熱により火花が出るようです(酸化鉄の活性化エネルギを超えるのに摩擦熱が必要てことかな?)。なので、火花を出すためには「摩擦熱を発生させる+鉄片を削る」ように鋼に打つ必要があります。(市販のスターターの発火石成分は不明ですが)基本的に火打石は高温の鉄片を散らすだけなので、点火する際には、炭素分を含むものを火口として準備しておく必要があります。多数の鉄片から火口に熱エネルギが伝わり、火口の発火点に達すると火が着きます。

まずは紙に火を点け、より大きい火を長く維持するため小枝に火を移した後、さらに薪に火を移します。木の中でも針葉樹は樹脂のお陰で燃えやすく、広葉樹は燃えにくい分、火が長持ちしやすいです。伐採直後の原木は水分を多く含むので、しばらく雨が降っていないなら落ちている枯れ木の方が燃えやすいです。小枝の代わりに、松ぼっくりでも松ヤニのお陰でよく燃えます。カリフォルニアの国立公園では小枝も拾うのが禁止されているので、薪を購入して小さく割って使います。


木材は200度以上で分解燃焼し表面が炭化します。同時に、炭素分を含む可燃性ガスが発生して、酸素と反応して燃焼します(例:CH4+2O2 -> CO2+2H2O…この反応を起こすには活性化エネルギ分の熱を火口から移す必要がある)。この化学変化で失われたエネルギー分が、光、つまり炎として見えます。炎の周りが熱いのは、温められた二酸化炭素と水蒸気のせいです(上の解説動画が分かりやすい)。木材表面が炭化すると、熱伝導率が下がり燃焼速度が低下します。小さい炎から放出される可燃性ガスはあまり多くないため、太い薪に火を移すには、一旦、断面積の小さい小枝の集合から徐々に燃やしていく必要があります。また、木材が水分を含んでいると蒸発により気化熱を奪われて温度が下がるため、燃焼温度に達するまで時間がかかってしまいます。

木炭は、半密閉で空気の少ない状態で長時間かけて熱し、木材から可燃性ガスを抜いたものです(木炭に関する詳細はコチラ)。木炭を燃やすと木炭自身が燃えるので炎が少なく、可燃性ガスよりも反応速度が遅いため長く高温を維持できます。また、木炭は多孔質なので内部に空気が入りやすい構造になっています。キャンプファイヤや焚き火には向かないですが、長時間安定した熱を供給できるのでBBQに適しています。


【薪を並べる】
薪の組み方で、空気の通り道と熱の伝え方が変わるので、火の強さ、持続時間、分布などが変わってきます。強い風を避けるために、太い薪の間に小枝や枯れ葉を入れるのが一般的です。地面の温度が低い場合は、太い薪を地面に並べ、小枝や枯葉をその上に置く方法もあります。


[テント(Teepee)型] 薪を円筒形に並べ、小枝や枯れ葉をその中に入れます。周りの薪が燃えると自然と中心に崩れていきます。薪に短時間で火を点けるのに優れた方法です。

[丸太小屋(Log cabin)型] 2本の薪を並行に並べ、その上に90度回転させて再び2本の薪を平行に並べます。これを繰り返して”井”の形を作り、囲いの中に小枝や枯れ葉を入れます。井形により周囲からの強風を防ぎつつ煙突効果が得られます。悪天候に優位です。井形の中にテント型を組むことで両方の長所が得られます(上の動画参照)。

[ハンター(Hunter)型] 2本の薪を風向きと並行に並べ、その上に蓋をするように90度回転させた薪を敷き詰める方法があります。空気が上ではなく、横に逃げる構造です。上にパンや鍋をおけるので、料理に適しています

[議会(Council)型] 2本の薪を風向きと並行に並べ、その上に蓋をするように90度回転させた薪を敷き詰め、さらに90度回転させた薪を敷き詰め…と繰り返し、ピラミッド形状にします。長時間、強い炎が出せます。大勢で焚火を囲んで踊ったり、語らい合うのに便利です。木の皮は上向きの方が火が着きやすいです。

[Swedish Torch/ Canadian Candle] 太い丸太とチェンソがあれば、スウェーデントーチを作れます。丸太がなくても、十本くらいの太い薪を円形に詰めて立て、その薪の間に小枝や枯葉を詰めればできます。火を点けてパンを置けば料理もできます。長時間火を点けておくのに優れた方法です。寒い場所で外で暖を取るのに便利です。


【焚火で調理する】
食べ物を焼く方法際には、食べ物に熱を伝える必要があります。熱を伝える方法として、主に対流熱、伝導熱、輻射熱があります。正確に言えばどの調理方法も3つとも関与してきますが、ざっくりいうと、対流熱は鍋の中で蒸す&煮る時、伝導熱はフライパンで焼く時、輻射熱はオーブンで焼く時に使う、というとイメージしやすいと思います。キャンプでは対流熱はあまり実用的ではないので、ここでは伝導熱と輻射熱について触れます。

焚火の場合、アルミ箔にくるんで火の中で蒸したり、金網の上で焼いたり、棒に差して直接炎であぶったりするので、主に伝導熱が使われます。炭(BBQ)なら、ハンバーガー、焼きおにぎり、焼き鳥、ソーセージ、各種野菜、バナナがおいしいです。焚火なら、ホットドック、マシュマロ、焼き芋がお勧めです。道具があるなら、スープや飯盒も良いですね。

一般の料理では、弱火で~140度、中火で~170度、強火で~200度だそうです。ガスコンロの外炎の温度は1500度(青色)ありますが、炎とフライパンの距離を変えることで、調理温度を調整できます(炎の温度分布はコチラ)。肉は、~60度で焼くとコラーゲンが収縮して硬くなり、~100度でコラーゲンが分解して柔らかくなります。155度以上で焼くとメイラード反応により風味が香ばしくなりますが、長時間焼き過ぎると肉汁が蒸発して硬くなってしまいます。食べ物を焦がさず焼くには中火になるように、薪や炭との距離で温度を調整します。焼き芋は、濡れた新聞紙とアルミ箔で覆い、熾火の中で~60度で30分放置します。熾火というのは、焚火の炎が消えた後の暖かい炭の状態です。

木材が加熱されると~100度で水分が蒸発し、~200度で可燃ガスが発生します。~400度になると木材から可燃ガスが燃えて炎が上がります(木炭や食用油の発火点は~300度)。炎の色は、~800度で橙色、~1000度で黄色になります。炎が赤色になるのは、可燃ガスの不完全燃焼によるものです。炎の一番外側では、酸素とよく反応して完全燃焼するため最も温度が高く、黄色ぽくなります。更に外側の二酸化炭素と水蒸気のある部分は暖かいですが無色です。木炭は~1000度になると赤くなります。そうでない時は400度くらいです。

ここまできてなんですが、伝導熱ならガスバーナー(ストーブ)が速くて簡単です。
JETBOIL: コップ2杯分の水が2分で沸かせます。
BioLite キャンプストーブ2: バーナーではなく焚火と同じなので温度調節が難しいですが、ファンがついている分、焚火よりも火力があります。また、その燃焼を利用して充電できるので非常時に便利です。バッテリーも内蔵されています。

一方、輻射熱を利用すれば、火から少し離れた場所でも赤外線でじわじわと焼くことができます。赤外線は、絶対0度でない物質の殆どから出ており、温度が高いほど放射量が増えます。赤外線は目には見えませんが、高温の炎からたくさん出ており、他の物に当たるとその表面で吸収されます。吸収された赤外線のエネルギー分だけ物体内の分子が振動し、熱が発生して内部に伝わっていきます。魚を直接火に当てなくても焚火の周りで焼くことができるのは、このためです。

水分量の多い食品やでんぷん、グルテン、小麦粉などは、波長3, 6, 10umを中心とした遠赤外線を効率よく吸収します。遠赤外線は、電子レンジに使われるマイクロ波と違って波長が格段に短いため、多くの赤外線は食品表面で吸収されます(詳細はコチラ)。食品に遠赤外線を充てると、食品内部からではなく、食品表面から熱がゆっくりと伝わって温められます

炭火焼の名前で知られるように、炭からは多くの赤外線が発生するので、炭で食べ物を焼くのに炎を出す必要はありません。それに炭は十分熱いです。また、赤外線は風の影響を受けないので、悪天候のときに優位です。赤外線は炎から放射線状に出るので真下から加熱する必要がなく、水分の出る食材でも横から温めることができて便利です。


【火を消す】
火は、「燃料、熱、酸素」の3点が揃って初めて燃焼します。火を消すには、この3つの内の一つを断てばいいのです。燃料となる薪や炭の供給を止めれば、火は消えます。しかし、すぐに火を消したい場合は、熱か酸素を奪う方が早いです。

一般的には火は水をかけて消します。水をかけると、気化熱により薪から熱を奪うことができます。しかし、内部の熱を奪うには多量の水が必要になります。熱伝導の高い物質は簡単に熱を逃がすことができるので、比較的引火点に達しにくくいです。

100度以上の油に大量の水をかけると、水の温度が瞬時に上がって気化するため、体積が数千倍に膨張して水蒸気爆発が発生します。この爆発により高温の油が周囲に飛び散るため、火災が拡大してしまいます。高温の油を冷やせる水の量とはどのくらいなのでしょうか?例え表面の油が冷えても油と水は混ざり合わず、水が下にあるより高温の油と触れるので・・・ダメそう(調査中)。

油火災では、まずはガスや電気を止め、熱の供給源を断ちます。そして、消火器で消します。消火器がなければ、フライパンの上に消火シートを被せることで酸素を断てば、消火することができます。消火シートの代わりに湿ったタオルを被せても良いですが、滴るくらい濡らしてしまうと爆発を引き起こしてしまいます。また、水分が蒸発し、油の温度がタオルの引火点以上であれば、タオルに火が着いて逆効果になるかもしれません。何枚も被せて油が冷えるのを待ちます。すでに壁や天井などの他の場所に燃え移っていたら、すぐに119番し、状況次第では消火せずに逃げましょう。

炭は油と同じで非常に高温なため、炭に水をかけると爆発し、炭や灰が周囲に飛び散ります。炭の火を消す場合は、完全に燃やしきるか、水を張ったバケツの中に炭を入れます。火消壺というのもあります。砂の中に埋めると酸素が断たれるので薪などの火は消えますが、炭の場合、熱が長く残るので危険です。数時間経っても、炭やその上の砂の温度は~80度を維持するそうです。火を消して冷やした後は、キャンプ場の所定の場所に捨てるか、自宅に持ち帰って燃えるゴミとして捨てるのがマナーです。

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